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2024.05.31
皆さん、耕知塾の小池です。耕知塾は金町、日暮里にある地域密着の、そして少人数責任指導の集団塾です。
【小さな哲学者の格言ノート No21】
「修士まで学んだ数学の知識が直接役に立ったことはほとんどないが、言葉を「正確・適切に定義する」訓練は、その後一人で論文を書くときにも、とても助けになった。」―新井紀子『数学は言葉』東京図書、2009年
一般的に、受験勉強で学んだ知識の多くが、社会に出た後、直接役に立たないと言われています。
残念ながら、これは事実だと、私も思います。
ですが、受験勉強を通じて、身につけた「考え方」(言葉を適切に使うこと)は必ず役に立ちます。社会に出た後、正しい「考え方」を身につけている人は、同じことを読んだり、聞いたりした時に、身につけていない人より、必要な情報を理解し、使うことができます。これが「物事を深く考えることができる」ということです。
ただし、勉強はただやれば良いというものではありません。
結果が出るような方法で、結果が出るようになるまでやらないと、時間と労力の無駄になります。やらされている勉強が良くないと言われるのは、「結果が出るような方法で、結果が出るようになるまで」勉強するという意識が低いためです。
つまり、正しい勉強方法で、しかも自ら「考えている」か、がポイントになります。
(大手、中小を問わず)塾で勉強を教えるやり方には、大きく分けて2つあります。①「教える」授業、②「教えない」授業です。
大手塾に圧倒的に多いのが、①の「教える」授業です。
大手塾はマニュアルに沿って決まったことをやらなければならないので、どうしても「決まったパターンを教える」授業になってしまいます。ですが、パターンで勉強している生徒は、いずれ伸び悩むことになります。というのも、勉強=「考えること」ではなく、勉強=「覚えること」と勘違いしてしまうからです。
確かに、小中学校のレベルであれば、考えなくてもパターンで解けてしまう問題が多くあります。ですが、勉強=「覚えること」と勘違いした生徒は、問題を少しひねられると途端に手が出なくなってしまいます。
例えば、中2英語で勉強する「動名詞」の場合です。
〈前置詞+動名詞〉を含む慣用表現の中に、「without ~ing(~しないで)」というのがあります。これを授業で説明を受けた後、
「トムは一言も言わず出ていきました。」
Tom went out without( )a word.
ひたすら↑のような問題を繰り返すというのがパターンの勉強です。
ところが、
He left the room. He didn’t say anything.
He left the room( )( )anything. (法政大第一)
のような問題を出されると、「without」がないので、パターンで問題を解いている生徒は、これが「without ~ing」の問題であるというところまで考えが及ばないのです。
こうした勉強を続けていると、特に高校に行ってから、少しひねられると手が出ないという症状が表面化してきます。
②の「教えない」授業は、(最近トレンドの)探究型の授業が好きな塾の先生やベテランの先生がやることが多いです。
確かに、「教えない」授業は自ら考えることにつながります。ただ、生徒のレベルによっては、一から教えなければならない場合や、先生が教えないことによって、授業中何も考えずにボーっと過ごしてしまう生徒も出てきます。
つまり、「教えない」授業は「どの生徒の場合でも」、「まったく」教えないとしてしまうと、実はただの手抜き授業になってしまうわけです。
勉強で大事なことは、(「覚える」ことではなく)「考える」(言葉を適切に使うこと)ことです。
私の授業では、生徒に「自ら考えてもらう」ために、(どんな基本的な問題であれ)1問1問に対して、以下の3点に注意を向けてもらいます。
①与えられた情報は何か?
②その情報の意味は何か?
③(与えられた情報をもとに)どのように問題にアプローチするのか?
(手っ取り早く授業をやるなら、やはりパターンで教えた方が良いのですが)私の場合、1つの問題の解き方(パターン)はあまり重視していません。(英語の場合なら、文法は覚えているけど、使い方はわからない状態にならないために)少し遠回りしてでも、いろいろな問題に応用可能で、将来役に立つ「考え方」を身につけてもらえるような授業が展開できるように心がけています。(ちなみに、勉強(授業)の結果は以下のとおりです。金町教室の都立高受験の合格率-22年度が83.3%、23年度が95.5%、24年度が91.3%-でした。)
*新井紀子は数学者。米国イリノイ大学数学科などで学び、現在、国立情報学研究所教授、同研究所社会共有知研究センター長。