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2022.09.03
皆さん、耕知塾の小池です。耕知塾は金町、日暮里にある地域密着の、そして少人数責任指導の集団塾です。
【小さな哲学者の格言ノート No.12】
「之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり((自分が)知っていること知っているとし、知らないことは知らないとする。それが知るということである)。」
―『「論語」為政第二17』
全20日間の夏期講習が終わりました。
講習中の中2、3の英語で、毎年扱う問題があります。
【問い】下記の文には、文法上の誤りがあります。正しく書き換えなさい。(川越東高)
There is the book on the desk.
(その本は机の上にあります。)
この問題は、夏期講習から耕知塾に入塾した生徒はほぼ間違えます。というより、通常はどこが「誤り」かに気づくことさえできません。
なぜ「誤り」に気づかないのでしょうか―。
多くの学校や大手塾では、「there is/are~」という単元は、
①there is/are=「~がある(いる)」という意味の文
②There is+単数名詞、There are+複数名詞
の2点がポイントであると教えています。
「there is/are~」を、be動詞の文の系統(バリエーション)として教えるわけです。
ですが、このレベルの理解だと、「there is/are~」のことを「知っている」だけで、「わかっている」とは言えません。上記の問題の「誤り」に気づかないのが、その証左です。
一般的に、知識は「知っている」状態から「わかっている」状態に深まると言われています。例えば、「よく考えれば、わかります」とは言えますが、「よく考えれば、知ります」とは言えません。あるいは、「よく知らない人」と言う場合は「面識のない人」のことですが、「よくわからない人」と言う場合は「面識はあるが、(話し手にとって)理解不能な人」のことになります。
ここで「知っている」と「わかっている」を定義すると、
・「知っている」とは、「未知のことが既知になった」状態のこと
・「わかっている」とは、「既知のことの「本質」をつかんでいる」状態のこと
となります。
「there is/are~」に話を戻しましょう。
先ほど、多くの生徒が「there is/are~」のことを「知っている」だけで「わかっている」とは言えないと書きましたが、それは、彼らがこの文の「本質」をつかんでいないからです。
「there is/are~」の「本質」とは、
①「there is/are~」の主語は「is/are」の後ろにある名詞である
②この主語には初めて話題に上がったものや人がくる(名詞の前にaやsomeなどがつくことが多い)
の2点になります。これらのことをつかんでいないと、上記の問題の「誤り」に気づくことはできません。
まず「本質」の①に照らし合わせて見ると、この文の主語は「the book」になります。次に「本質」の②に照らし合わせて見ると、「the book」は「初めて話題にあがった」本ではなく「聞き手がすでに知っている」本なので、(「there is/are~」の)「本質」とは合わないということになり、「there is/are~」の文は成り立たないということになります。
では、どのように正しく書き換えれば良いのでしょうか。
be動詞には「①イコール(…は~です)、②~がある(いる)」という二つの意味があります。ここでは、②の「~がある(いる)」の意味を使います。主語は「その本は」とあるので、正解は「The book is on the desk.」となります。
なぜ毎年上記の問題を扱うのかというと、「there is/are~」という単元を理解してもらうためではなく、「知っている」と「わかっている」の違いを理解してもらうためだったというわけです。
※『論語』とは、儒教の経典の一つ。孔子とその高弟の言葉を記録した書物。